教区報

主教コラム

礼拝堂探検隊 第5回「聖堂ー①」

聖堂入口脇にある洗礼盤をちらりと見て、洗礼の約束を思い起こした私たちは、聖堂の中に入っていきます。

 

その前に、聖堂の全体像を見てみましょう。もっとも、初代教会の頃、キリスト者は特別な集会場所をもっていませんでした。聖パウロの頃は比較的大きな家を持っていた信徒宅が主日に礼拝場所として提供されたようです。また、迫害時代には信徒宅以外に、こっそりと人目につかない場所に集まっていたようで、ローマのカタコンベ(地下墓地)は有名です。

 

 

しかし、313年のミラノの勅令によってキリスト教が公認されると、特定の礼拝場所として聖堂が建てられるようになりました。これらはバシリカ様式と呼ばれますが、当時のローマの法廷などの建物が、そのまま教会建築に応用されたようです。

 

その後、時代と共に建築様式はビザンティン、ロマネスク、ゴシックなどと移り変わっていきますが、その基本はバシリカ様式にあるようです。聖公会の多くの聖堂もこの様式を基本にしていて、その最も単純な形が右の構造です。

 

①は祭壇が置かれているサンクチュアリー sanctuary(至聖所)、②は朝夕の礼拝が行われるチャンセル chancel(聖所または内陣)、③はネイヴnave(身廊)と呼ばれる会衆席の場所です。

 

聖堂は原則として祭壇のある部分が東方になるように建てられました。そこで祭壇のある方を「東(Liturgical East リタージカル イースト)」と呼びます。聖堂が実際には東西方向に建っていない場合でも、祭壇のある方を「東」と呼び、その反対方向を「西」と呼ぶのが慣例です。ですから祭壇の方を向くことを「東面する」と言います。

 

教区主教

 

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